夜桜見物の街….或いは眠れる大亀の上の街


この空域ではごく限られた期間だけ美しいピンク色の霞が発生する

このシーズンになると、宇宙中から沢山の人々が集まってくる

この星に逗留している間、人々は「お花見」と称して、連日飲み、騒ぎ、霞に酔うがごとく浮かれて過ごす

そして霞が消えると、人々はふいに夢から覚めたように慌ただしく帰途につき、日常に戻っていく

ところでこの星は、生きている生物に星の種が付着し、星として育ちつつあるとても珍しい例だと専門家は言う

ロンサムジョージと呼ばれているこの大亀は、齢一万歳とも言われ、未だ千年を超える長い長い眠りの中にいる

いつか目を覚ますのか?

 それとももう夢から覚めることはないのか?

どちらにしても、人の夢と違って亀の眠りは深く広大で、その謎はまだまだ解けそうにない