亜真園星(アマゾノセイ)


その星は正規の航路から大きく外れている上に、極度に蒸し暑いため、人が住むのには適さず、まったくの無人の星だと言われている。

 数年前、生物学者として大変有名なトミー・ファーブル博士が、探索のためこの星に立ち寄り、消息を絶った。

 すぐに捜索隊が向かったが、一面厚い緑のジャングルで覆われた星での捜索は、困難を極めた。

 吸血蔦に巨大な昆虫。そして時折大気を揺らすような、何か巨大な未知の生物の咆哮。そんなものに脅かされながら捜索隊が見つけ出せたのは、大破した飛行艇と、そばに落ちていた博士の鞄。

 二週間に及んだ捜索は、それらを見つけた事で、博士は亡くなったと判断し打ち切りとなったのだった。

 後日捜索隊に加わった、昆虫学者が記者に語った。

「鞄の周囲では、本やペンなど、博士の持ち物そっくりの形をした、変わった虫たちが見つかりました。

 まったくおかしな話です。昆虫ってこんな短期間に変化するものなんでしょうか?そもそも擬態って、周囲から自分を目立たなくさせるためでしょう?なのにこれじゃあ、まったく反対の効果しかない。

 それにね、博士だって、足跡ひとつ、衣服の切れ端一枚見つからないんです。まるで博士自ら姿を隠したようでした。」   亜真園星、そこには絶滅した生き物たちが未だ生息しているとか、古代の邪神を祭った神殿があって、生命を蘇らせる泉を守っているとか、さまざまな噂はあるが、誰も確かめた者はいない。